2019年5月に福島県南相馬市への転勤を命じられた著者は朝日新聞記者。実際に福島の帰還困難区域のすぐそばに居住しての現地取材。ようやく入居できたアパートでの異常な生活をはじめとして、現地の事故前・事故後の生々しい声がひしめいている。かつてアトム打線と称された双葉高校野球部OBや原子力最中(もなか)と命名された菓子の店主、浪江町に帰還した住民、。。。圧巻は浪江町長・馬場有(たもつ)さんの話と彼の最期の姿に著者が感じたもの。
「白い土地」とは地元での隠語だという。伸び放題の植物に呑み込まれたようになって放置されている乗用車や家々は、色合いから言えば緑一色ではあっても、緑の土地と呼べる場所ではなくなっている。これから1000年先、どうなっていくのか。エンディングで著者はこう書いている。
胸の線量計が「ピー」という不快な電子音をあげ、思考が現実へと引き戻される。液晶画面に映し出される忌々しいそれらの数値は、それを所持する人間に早急にその場から退去するよう命令している。
我々はその数字の累積によって管理され、同時に監視されている。
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