異なり記念日(著)齋藤陽道/シリーズ ケアをひらく

「言葉」と「ことば」を使い分けている著者のこころねが愛おしい。ろう者に対してつい「やさしいふり」をしてしまうわたしが居るのを実感させられるが、それ以上に、感動するんだなあ、エピソードのどれもこれも。聴者家族に生まれた聾者の著者が、聾家族に生まれた聾者の妻とのあいだに、聞こえる児が生まれ、その一日一日の物語は、想像を超えているとしかいいようがない。

かれらに寄せられるさまざまな善意の助言がまた、一層とかれらを悩ませている現実も重い。

最近、聞こえるこども(コーダ)が産まれたろう者の友達が言っていたことが、棘になってこころに引っかかっている。

「親と手話で話ができたからって、将来的には役に立たないでしょう。(中略)親子で会話ができることよりも、こどもが自分で生きていけるようにするべき」

そんな意見とはまったく逆のことを言う人もいた。(中略)どうすればいいのか、正直なところ、よくわからない。

つまるところは、こどもに対する愛情を感じているか、どう表現しているか、に帰結するきがする。聾者であるかどうか以前の問題として。そして、聞こえているわたしが一番学ばなければいけないのは、発語としての「言葉」だけが「ことば」じゃないって意識なのだ。


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