新刊予約本が届く。重いテーマに不釣り合いとも感じられる表紙デザインのみちびきに身を委ねてみたのだが、想定通り、専門的な情報満載(をずいぶんと咀嚼して素人に伝えようとする意図だけはしかと受納しつつ)で、ほんわかしたムードは皆無。わずかに、柔らかいタッチのイラストが時折挿入され、丸みを帯びたフォントの勢いに乗って重大事件の深層について読み進めることとなる。
はっきりいって、本書は、日本の子どもたちの養育・保育・教育などにたずさわっているすべての人が知っておかなければならない医療倫理の書だ。より的確にいおうとするなら、福島の子どもたちの身に起こっているスクーリング事実を知って、みずから考え、アクションを起こさなければならない喫緊の倫理書に他ならない。ただ、読者を福島の人びとに限定する考え方にわたしは賛同できない。福島の問題を日本の問題と受け止めること、そうでなければこの国の医療は滅びるよ、ほんとに。
【追記】あとがきに高野徹さんが書いておられる文章を引用しておきたい。[2021-08-14]
(前文略)本書の企画を立ち上げていただいたあけび書房の岡林信一さんに感謝を申しあげたいと思います。そもそも過剰診断の問題にかかわるとろくなことがありません。誰からも(被害者からさえもです)感謝されないし、多くの人たちから邪魔者扱いされ、誤解されて非難を受ける、というのがお決まりのコースです。そんな中で、火中の栗を拾ってくれる岡林さんのような方が一人、また一人と現れてやっと本書が発刊できる環境が整ったのです。
あとがき・高野徹
以下、これから読む人のためにも目次を示しておく。
mokuji1最近の読書10冊(予定を含む)
- 映画にしなければならないもの(INTERVIEW)瀬々敬久・佐藤健・阿部寛/キネマ旬報2021年10月上旬号
- 小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌/回顧展公式カタログ兼書籍
- シンポジウム「明日に向けて、何をどう書いていくか」日本児童文学者協会2021公開研究会/案内リーフレット
- 「ぞうもかわいそう」再びー『かわいそうなぞう』の虚偽(筆)長谷川潮/『日本児童文学』2021年9・10月号特集「伝える」を問い直す
- レイシズムを考える(編)清原悠
- 咀嚼不能の石(筆)古矢旬/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号巻頭
- 読書の敵たち(筆)大澤聡/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号所収
- 宵の蒼(著)ロバート・オレン バトラー(訳)不二淑子/「短編画廊 絵から生まれた17の物語」所収 (ハーパーコリンズ・フィクション)
- 木村素衞――「表現愛」の美学 (再発見 日本の哲学)(著) 小田部胤久
- たまごのはなし(作・絵)しおたにまみこ