2年前に読んだときは後に何も残らなかったのに、手話のことに少しばかり関心を寄せている今、読み返してるうちに胸が熱くなる自分にハッとした。声帯の手術をした元彼が、自分のことばを探している。
言葉ってさ、と彼が言った。「他の人と会話するためのものみたいだけど、根本的には自分との対話のためのものだって気がしたんだよ」
p.206-207
既存の手話に満足しきれない彼は自分のために自分の手話ことばを一つ一つ生みだしている。口述言語であれ手話言語であれ、おおくの言葉には社会で共有されるまでの長い道程があり、源にはそれぞれの物語や因縁、背景、特殊事情などがあり、言葉と言葉が互いにからまりあいながら命を吹き込まれてきたに違いない。言葉を愛おしむこころは言葉を越えている。。。
ちなみに2年前の『絶望書店』感想はこちら。