特ダネを追う新聞記者たちの半世紀をコンパクトに手玉にした短編集。スクープの華々しさとは裏腹に、そこに至る(あるいは至らない多くの)舞台裏の物語はどろどろとしているだけでなく、どうにも哀愁が漂う。社会の時々刻々の移り変わりの中で、とっておきの今を追いかけているように見えて、案外、虚空を掴もうとしている人が少なくない。嗚呼、これは毎日を必死に生きているつもりが、周りからすれば何やってるのという類いの、実はそちらが社会人の本流に見えて一層哀しくもある。それでも一瞬の煌めきを追うべき、と言いたいのかどうか、答はひとりひとりの人生のおしまいに決するとしかいえまい。
最近の読書10冊
- 映画にしなければならないもの(INTERVIEW)瀬々敬久・佐藤健・阿部寛/キネマ旬報2021年10月上旬号
- 小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌/回顧展公式カタログ兼書籍
- シンポジウム「明日に向けて、何をどう書いていくか」日本児童文学者協会2021公開研究会/案内リーフレット
- 「ぞうもかわいそう」再びー『かわいそうなぞう』の虚偽(筆)長谷川潮/『日本児童文学』2021年9・10月号特集「伝える」を問い直す
- レイシズムを考える(編)清原悠
- 咀嚼不能の石(筆)古矢旬/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号巻頭
- 読書の敵たち(筆)大澤聡/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号所収
- 宵の蒼(著)ロバート・オレン バトラー(訳)不二淑子/「短編画廊 絵から生まれた17の物語」所収 (ハーパーコリンズ・フィクション)
- 木村素衞――「表現愛」の美学 (再発見 日本の哲学)(著) 小田部胤久
- たまごのはなし(作・絵)しおたにまみこ