2017年に多発性骨髄腫に罹った写真家による人生相談コラムから選ばれた32選。難治の病者なのに頑張る人だから相談される、と思いがちだがそうじゃない。幡野広志だからなんだ。相談されることを好んでもいないし、自分の能力を誇示したりもしない。ただ、相談されるから応答しているだけ。彼は癌ばかりでなく、自身も妻も家族のことで苦しんだ時代を経て今がある(という事実も相談者への返答に応じて開示してるだけ)。相談者の話に向き合う距離感こそ彼の持ち味であり、本人もそれを大切にしている。冷静だけど冷たくない。理解しにくい境遇でも理解しようと全力。直言するが恩着せがましくない。これは想像でしかないが、どんな時も的外れなアドバイスにならない神秘性を秘めているのでは。
彼の写真作品もまた人柄というか生きざまを表しているようだ。人物がほとんど登場しない写真なのに、ヒトの想いみたいなものが彷彿としてくる。人間の表面に接しながらも、内なる世界を感受してしまう眼力を有しているのだろうか。先天的かもしれないし、後天的かもしれない。
- 映画にしなければならないもの(INTERVIEW)瀬々敬久・佐藤健・阿部寛/キネマ旬報2021年10月上旬号
- 小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌/回顧展公式カタログ兼書籍
- シンポジウム「明日に向けて、何をどう書いていくか」日本児童文学者協会2021公開研究会/案内リーフレット
- 「ぞうもかわいそう」再びー『かわいそうなぞう』の虚偽(筆)長谷川潮/『日本児童文学』2021年9・10月号特集「伝える」を問い直す
- レイシズムを考える(編)清原悠
- 咀嚼不能の石(筆)古矢旬/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号巻頭
- 読書の敵たち(筆)大澤聡/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号所収
- 宵の蒼(著)ロバート・オレン バトラー(訳)不二淑子/「短編画廊 絵から生まれた17の物語」所収 (ハーパーコリンズ・フィクション)
- 木村素衞――「表現愛」の美学 (再発見 日本の哲学)(著) 小田部胤久
- たまごのはなし(作・絵)しおたにまみこ