今朝の愛媛新聞2面「季のうた」に自由律俳人橋本夢道さんの句が採り上げられている。
みつまめをギリシャの神は知らざりき
橋本夢道
その昔、東京銀座の甘味店のために考えられた句だという。夢道さんは1974年に71歳で没しているが、これはいつの句だろうと気になった。1964年の東京オリンピックを念頭に古代ギリシアに想いを馳せたのだろうか。今日の新聞掲句は、いうまでもなく今日のオリンピック開会式に照準を合わせていて、ひねりの効いた解説で結ばれている。
従来とは異なるさまざまな展開にギリシャの神もさぞや驚いていることだろう。
この一文のお陰で、掲句は新たな趣を令和に獲得したことになる。いいなあ。佳い作品は時代を超えて受け継がれると聞くけれども、後世に読み返されることで、豊かな世界をさらに拡張させていくのだ。中には、作者の存命中に日の目を見なかった作が、のちの時代に何かの機縁で読まれて価値を見いだされることも少なくないに違いない。テクスト論的にいうなら、誰が書いたか、いつどこで書いたか、というだけでなく、誰がいつどこで読んだか、によって文学文芸の世界は無限に拡がる。
そんなわけで、掲句そのものが目次に組まれている『橋本夢道物語』を入手して読むかな、と思案しはじめたところ。夢想中。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 映画にしなければならないもの(INTERVIEW)瀬々敬久・佐藤健・阿部寛/キネマ旬報2021年10月上旬号
- 小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌/回顧展公式カタログ兼書籍
- シンポジウム「明日に向けて、何をどう書いていくか」日本児童文学者協会2021公開研究会/案内リーフレット
- 「ぞうもかわいそう」再びー『かわいそうなぞう』の虚偽(筆)長谷川潮/『日本児童文学』2021年9・10月号特集「伝える」を問い直す
- レイシズムを考える(編)清原悠
- 咀嚼不能の石(筆)古矢旬/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号巻頭
- 読書の敵たち(筆)大澤聡/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号所収
- 宵の蒼(著)ロバート・オレン バトラー(訳)不二淑子/「短編画廊 絵から生まれた17の物語」所収 (ハーパーコリンズ・フィクション)
- 木村素衞――「表現愛」の美学 (再発見 日本の哲学)(著) 小田部胤久
- たまごのはなし(作・絵)しおたにまみこ