2年前に読んだときは後に何も残らなかったのに、手話のことに少しばかり関心を寄せている今、読み返してるうちに胸が熱くなる自分にハッとした。声帯の手術をした元彼が、自分のことばを探している。
言葉ってさ、と彼が言った。「他の人と会話するためのものみたいだけど、根本的には自分との対話のためのものだって気がしたんだよ」
p.206-207
既存の手話に満足しきれない彼は自分のために自分の手話ことばを一つ一つ生みだしている。口述言語であれ手話言語であれ、おおくの言葉には社会で共有されるまでの長い道程があり、源にはそれぞれの物語や因縁、背景、特殊事情などがあり、言葉と言葉が互いにからまりあいながら命を吹き込まれてきたに違いない。言葉を愛おしむこころは言葉を越えている。。。
ちなみに2年前の『絶望書店』感想はこちら。
最近の読書10冊(予定を含む)
- サン=テグジュペリ Saint-Exupéry R.M.アルベレス(著)中村三郎(訳)1998年改訂版
- においのカゴ 石井桃子創作集 大西香織(編集)
- 日本美術のことばと絵 玉蟲敏子(著)角川選書571
- 考える江戸の人々 自立する生き方をさぐる 柴田純(著)
- だまされ屋さん 星野智幸(著)
- 日本幼児史 子どもへのまなざし 柴田純(著)
- 雪の森のリサベット アストリッド・リンドグレーン(作)イロン・ヴィークランド(絵)石井登志子(訳)
- 子どもらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号/らしさについて考える③)
- ブリキの卵/この世は少し不思議 恩田陸(著)「タマゴマジック」所収・河北新報出版センター発行
- 分断を超えるハンセン病文学の言葉(執筆)木村哲也(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号)