特ダネを追う新聞記者たちの半世紀をコンパクトに手玉にした短編集。スクープの華々しさとは裏腹に、そこに至る(あるいは至らない多くの)舞台裏の物語はどろどろとしているだけでなく、どうにも哀愁が漂う。社会の時々刻々の移り変わりの中で、とっておきの今を追いかけているように見えて、案外、虚空を掴もうとしている人が少なくない。嗚呼、これは毎日を必死に生きているつもりが、周りからすれば何やってるのという類いの、実はそちらが社会人の本流に見えて一層哀しくもある。それでも一瞬の煌めきを追うべき、と言いたいのかどうか、答はひとりひとりの人生のおしまいに決するとしかいえまい。
最近の読書10冊
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- 目利きの本屋さんに聞いてみた(暮しの手帖Winter 2020-21)