きょうも写真は扉。昔懐かしい、図書館の貸出票っぽいデザインだが、さりげなく添えてある「必ず期限を守りましょう。」の一文が謎めいて見えるのは深読みだろうか。そう思いつつ読んだ結果は……
深読みだったみたい。それでも特別なメッセージが込められていると執拗に勘ぐるのもまた愉快。
市立図書館リファレンスカウンターに勤務する青年が同僚とともに厄介な相談に本気でのめり込む連作で、癖強ながらもその姿は好感度が高い。
構成としてミステリーっぽくて、奇天烈な本探査のゆくえはよく練られている。ネタバレになるが、なかでも森林太郎(鷗外)とまぎらわしい林森太郎の本の話題とか。
さらに、町の図書館存廃を賭けた問題にこの青年が巻き込まれて、議会で参考人招致されて図書館の存在意義を語る件りは純粋に熱い。でも、その成否がエンディングじゃなくて・・・なんてところが、青春小説のいい味を出している。でも物語のなかでの取り扱い書籍から考えて対象年齢はおじさんおばさんのようではある。(相当年齢高めでもOK。)
付けたり。諸処に難読難語が散りばめられているのも、それっぽい世界観なんだろう。
最近の読書10冊
- 映画にしなければならないもの(INTERVIEW)瀬々敬久・佐藤健・阿部寛/キネマ旬報2021年10月上旬号
- 小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌/回顧展公式カタログ兼書籍
- シンポジウム「明日に向けて、何をどう書いていくか」日本児童文学者協会2021公開研究会/案内リーフレット
- 「ぞうもかわいそう」再びー『かわいそうなぞう』の虚偽(筆)長谷川潮/『日本児童文学』2021年9・10月号特集「伝える」を問い直す
- レイシズムを考える(編)清原悠
- 咀嚼不能の石(筆)古矢旬/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号巻頭
- 読書の敵たち(筆)大澤聡/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号所収
- 宵の蒼(著)ロバート・オレン バトラー(訳)不二淑子/「短編画廊 絵から生まれた17の物語」所収 (ハーパーコリンズ・フィクション)
- 木村素衞――「表現愛」の美学 (再発見 日本の哲学)(著) 小田部胤久
- たまごのはなし(作・絵)しおたにまみこ