2年前に読んだときは後に何も残らなかったのに、手話のことに少しばかり関心を寄せている今、読み返してるうちに胸が熱くなる自分にハッとした。声帯の手術をした元彼が、自分のことばを探している。
言葉ってさ、と彼が言った。「他の人と会話するためのものみたいだけど、根本的には自分との対話のためのものだって気がしたんだよ」
p.206-207
既存の手話に満足しきれない彼は自分のために自分の手話ことばを一つ一つ生みだしている。口述言語であれ手話言語であれ、おおくの言葉には社会で共有されるまでの長い道程があり、源にはそれぞれの物語や因縁、背景、特殊事情などがあり、言葉と言葉が互いにからまりあいながら命を吹き込まれてきたに違いない。言葉を愛おしむこころは言葉を越えている。。。
ちなみに2年前の『絶望書店』感想はこちら。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 映画にしなければならないもの(INTERVIEW)瀬々敬久・佐藤健・阿部寛/キネマ旬報2021年10月上旬号
- 小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌/回顧展公式カタログ兼書籍
- シンポジウム「明日に向けて、何をどう書いていくか」日本児童文学者協会2021公開研究会/案内リーフレット
- 「ぞうもかわいそう」再びー『かわいそうなぞう』の虚偽(筆)長谷川潮/『日本児童文学』2021年9・10月号特集「伝える」を問い直す
- レイシズムを考える(編)清原悠
- 咀嚼不能の石(筆)古矢旬/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号巻頭
- 読書の敵たち(筆)大澤聡/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号所収
- 宵の蒼(著)ロバート・オレン バトラー(訳)不二淑子/「短編画廊 絵から生まれた17の物語」所収 (ハーパーコリンズ・フィクション)
- 木村素衞――「表現愛」の美学 (再発見 日本の哲学)(著) 小田部胤久
- たまごのはなし(作・絵)しおたにまみこ