特ダネを追う新聞記者たちの半世紀をコンパクトに手玉にした短編集。スクープの華々しさとは裏腹に、そこに至る(あるいは至らない多くの)舞台裏の物語はどろどろとしているだけでなく、どうにも哀愁が漂う。社会の時々刻々の移り変わりの中で、とっておきの今を追いかけているように見えて、案外、虚空を掴もうとしている人が少なくない。嗚呼、これは毎日を必死に生きているつもりが、周りからすれば何やってるのという類いの、実はそちらが社会人の本流に見えて一層哀しくもある。それでも一瞬の煌めきを追うべき、と言いたいのかどうか、答はひとりひとりの人生のおしまいに決するとしかいえまい。
最近の読書10冊
- 戦争は女の顔をしていない(著)スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(訳)三浦みどり
- 徹底して戦争と死について書く(執筆)沼野充義(『図書』岩波書店定期購読誌2020年11月号巻頭)
- 夢の舟唄(德永民平詩集)
- わさびの日本史 (著)山根京子
- 国家への道順(著)柳美里
- 正義のゲーム理論的基礎(著)ケン・ビンモア(訳)栗林寛幸
- 社会契約論ーーホッブス、ヒューム、ルソー、ロールズ(ちくま新書)(著)重田園江
- 40代から始めよう! あぶら身をごっそり落とす きくち体操
- スケール 上──生命、都市、経済をめぐる普遍的法則(著)ジョフリー・ウェスト(訳)山形浩生・森本 正史
- 多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)