和歌に取り憑かれた研究者(だと思う)渡部泰明先生の、篤くて温かい和歌系譜談義は、知っていたつもりの歌人たちをそれぞれ和歌史の潮流の立役者として見事に配置してみせている。すごっ。映画に喩えるなら、大物俳優たちをみごとにキャスティングした監督といったところだろうか。それを可能ならしめた端緒は、40年以上前に卒論テーマを決めあぐねていた時、遭遇した寺山修司のことばの鮮烈さだったというから、寺山修司の普遍性にあらためて驚嘆するばかりだ。
そのことばがこちら。
縄目なしには自由の恩恵はわかりがたいように、定型という物が僕に言語の自由をもたらした。
寺山修司「僕のノオト」『空には本』
幸いに、本の帯の裏面には、章立てに掲げられたタイトル群(歌人たちとその役割)が並んでいるからアップしておきたい。
- サン=テグジュペリ Saint-Exupéry R.M.アルベレス(著)中村三郎(訳)1998年改訂版
- においのカゴ 石井桃子創作集 大西香織(編集)
- 日本美術のことばと絵 玉蟲敏子(著)角川選書571
- 考える江戸の人々 自立する生き方をさぐる 柴田純(著)
- だまされ屋さん 星野智幸(著)
- 日本幼児史 子どもへのまなざし 柴田純(著)
- 雪の森のリサベット アストリッド・リンドグレーン(作)イロン・ヴィークランド(絵)石井登志子(訳)
- 子どもらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号/らしさについて考える③)
- ブリキの卵/この世は少し不思議 恩田陸(著)「タマゴマジック」所収・河北新報出版センター発行
- 分断を超えるハンセン病文学の言葉(執筆)木村哲也(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号)