
わたしには理解不能の世界である。夏目漱石先生を筆頭に、神経質な読書人の皆さんは静寂でなけれな無間地獄にも等しい苦痛と感じるらしい。わたしの場合は、どれほど騒がしい場所でも、本を読み出したら本の世界に没入してしまう性(たち)なのでそうでない人びとの気持ちがよくわからない。(そんなわたしも睡眠の際は静寂でなけれな無間地獄と思うので、人それぞれだなあというくらいは感じている。)
ショーペンハウアーはこんなこともいっている。音になんら煩わされることもなく私の苦痛を笑う人間は、無感覚ゆえに思想も詩も芸術も解さない、頭脳の鈍い野蛮な奴らなのだ。
笑うしかない、本当に。大澤さんらから見てわたしなんぞは野蛮人らしい。腹立つどころか笑うしかない。きっと、自称読書人には、静寂必須人とか騒音無関係人とか、いろんなタイプの読書人がいるのです。実に愉しい世界だ。
最近の読書10冊(願望を含む)
- 映画にしなければならないもの(INTERVIEW)瀬々敬久・佐藤健・阿部寛/キネマ旬報2021年10月上旬号
- 小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌/回顧展公式カタログ兼書籍
- シンポジウム「明日に向けて、何をどう書いていくか」日本児童文学者協会2021公開研究会/案内リーフレット
- 「ぞうもかわいそう」再びー『かわいそうなぞう』の虚偽(筆)長谷川潮/『日本児童文学』2021年9・10月号特集「伝える」を問い直す
- レイシズムを考える(編)清原悠
- 咀嚼不能の石(筆)古矢旬/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号巻頭
- 読書の敵たち(筆)大澤聡/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号所収
- 宵の蒼(著)ロバート・オレン バトラー(訳)不二淑子/「短編画廊 絵から生まれた17の物語」所収 (ハーパーコリンズ・フィクション)
- 木村素衞――「表現愛」の美学 (再発見 日本の哲学)(著) 小田部胤久
- たまごのはなし(作・絵)しおたにまみこ