和歌に取り憑かれた研究者(だと思う)渡部泰明先生の、篤くて温かい和歌系譜談義は、知っていたつもりの歌人たちをそれぞれ和歌史の潮流の立役者として見事に配置してみせている。すごっ。映画に喩えるなら、大物俳優たちをみごとにキャスティングした監督といったところだろうか。それを可能ならしめた端緒は、40年以上前に卒論テーマを決めあぐねていた時、遭遇した寺山修司のことばの鮮烈さだったというから、寺山修司の普遍性にあらためて驚嘆するばかりだ。
そのことばがこちら。
縄目なしには自由の恩恵はわかりがたいように、定型という物が僕に言語の自由をもたらした。
寺山修司「僕のノオト」『空には本』
幸いに、本の帯の裏面には、章立てに掲げられたタイトル群(歌人たちとその役割)が並んでいるからアップしておきたい。
- 「おばさん」がいっぱい(執筆)三辺律子(『図書』岩波書店定期購読誌2021年4月号/本をひらいた時)
- 七万人のアッシリア人 ウイリアム・サローヤン(著)斉藤数衛(訳)現代アメリカ作家集上巻所収1971年初版
- 季(とき)間中ケイ子(筆)ほか/日本児童文学2021年3・4月号 特集25年後の子どもたちへ
- カフカらしくないカフカ 明星聖子(著)
- 雪の練習生 多和田葉子(著)
- 物理の館物語(著者不明)/小川洋子『物理の館物語』参照(柴田元幸編『短篇集』所収)
- 『還れぬ家』『空にみずうみ』佐伯一麦(著)
- 十一年目の枇杷(執筆)佐伯一麦(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/巻頭)
- もっともらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/らしさについて考える④)
- 【続】フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い化面』小野正嗣(筆)NHK100分de名著