2年前に読んだときは後に何も残らなかったのに、手話のことに少しばかり関心を寄せている今、読み返してるうちに胸が熱くなる自分にハッとした。声帯の手術をした元彼が、自分のことばを探している。
言葉ってさ、と彼が言った。「他の人と会話するためのものみたいだけど、根本的には自分との対話のためのものだって気がしたんだよ」
p.206-207
既存の手話に満足しきれない彼は自分のために自分の手話ことばを一つ一つ生みだしている。口述言語であれ手話言語であれ、おおくの言葉には社会で共有されるまでの長い道程があり、源にはそれぞれの物語や因縁、背景、特殊事情などがあり、言葉と言葉が互いにからまりあいながら命を吹き込まれてきたに違いない。言葉を愛おしむこころは言葉を越えている。。。
ちなみに2年前の『絶望書店』感想はこちら。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 「おばさん」がいっぱい(執筆)三辺律子(『図書』岩波書店定期購読誌2021年4月号/本をひらいた時)
- 七万人のアッシリア人 ウイリアム・サローヤン(著)斉藤数衛(訳)現代アメリカ作家集上巻所収1971年初版
- 季(とき)間中ケイ子(筆)ほか/日本児童文学2021年3・4月号 特集25年後の子どもたちへ
- カフカらしくないカフカ 明星聖子(著)
- 雪の練習生 多和田葉子(著)
- 物理の館物語(著者不明)/小川洋子『物理の館物語』参照(柴田元幸編『短篇集』所収)
- 『還れぬ家』『空にみずうみ』佐伯一麦(著)
- 十一年目の枇杷(執筆)佐伯一麦(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/巻頭)
- もっともらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/らしさについて考える④)
- 【続】フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い化面』小野正嗣(筆)NHK100分de名著