前号で「らしさ」シリーズの端緒を飾った「女らしさ」につづくのはやっぱり「男らしさ」だ。そこは読み通りだったが、予想通りの展開のあとの待っていたのは、ほんに今どきの「男らしさ」を問う素晴らしい提言としての一品だった。
そもそも男らしさの対義語は女々しいではないか、という提示は、ふむふむという感じで始まった。日本近代の男女観のモデルに選ばれたのは新渡戸稲造。男性は女性の保護者という感じ。それが現在平成令和にどう変わったかとして白羽の矢が当たったのは霊長類学者・人類学者の山極寿一さんだが、男は食物獲得に精出し、女性を守るという点で男らしさに変化は見られないという、ほんと今の日本の状況が浮き彫りに。しかし、そこで終わったら面白くも何ともない。著者の着眼が鋭い。題して「つわり」を覚える男たち。
妻の妊娠と同時に夫がつわり(悪阻)を体験する事例は、実は古く柳田国男の記録でも見られるもので、民俗学的には昔は十人に一人見られたとの記録もある。現代に於いて、イクメンが取り沙汰されるようになったが、つわりを覚える男達は今後「女らしい」男と言われるのか、「女々しい」男になるのか、それ以上に「男らしい」男と解釈されるのか、これは実に大きな転換期に差し掛かったとみてとれるのかもしれない。
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《参考》前号「女らしさ」の巻は、こちら