日本民俗学の再興者(と呼びたい、東北学の先覚)赤坂憲雄さんと気鋭の歴史学者藤原辰史さんの書簡対話最終回にふさわしい、時代の闇に光を差し込もうとする不屈の決意が充溢している。まずは、福島とそこに暮らす人びとがこの10年ふりまわされてきた分断と統治の図式は深刻の度を増しているのに、わたしたち(日本人)の知や学問が痩せこけている現実を突きつけている。その象徴はあいちトリエンナーレ2019の前年に福島で起きた「サンチャイルド撤去問題」だと筆者は指摘している。翌年の予行演習とも。。。この指摘に接し、わたしもこの事案を消化せず時間に押し流されてきた一人であることを痛感愕然としている。あの事件は大騒動になりそうな気配に早早撤去という決着がついて、賛否論者双方の溝を放置したまま立ち消えになって・・・(わたしも記憶すら亡失の体たらく)。嗚呼、現今の学術会議問題とても同じ系譜なのだ。
学術会議の問題など、戦前のような思想や学問への弾圧を連想させますが、しかも、それが強固なイデオロギー的基盤をほとんど感じさせないところに、間抜けなまでに「日本的な」精神のありようを見いださずにはいられません。
著者は、おぞましいまでの無気力な現状を「撤退の時代」と言い放ちつつも、書簡として藤原さん(そしてわれわれ)に呼びかけている。
それぞれの場所で、可能ならば、命あるかぎり勝てなくとも負けない戦いを継続していけたら、と思います。
結びに記された(心身の)在所が、これまた、今の時代のひとつのシンボルを掲げている。
二〇二〇年一一月二一日 台湾の若者たちとの出会いの余韻のなかで
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