
星野博志さんの版画タッチもことばセンスも愉快なうえに、この詩画集の出来といったら星野ワールドを奇天烈の極みに高めているんじゃないかな。OH!全部の写真をアップしたいほどだ。息が合っているとは、こういう人たちのことなんだと感歎する。
画としては顔のアップが異常に多い。でも観る者とバッチリ目を合わせることはない。作者のシャイな感じの反映かもしれないし、作者の視線の投影かもしれない。基本、楽しくなるのだけれど、バカ騒ぎのようなおちゃらけの後に何だか哀愁みたいな感覚がまとわりついてくる。
顔
最近/ちょくちょく/顔が消える
アタマが/消えることはあったが/顔が消えるとは/思ってもみなかった
どこに消えるかは/およそ見当がつく/空の方だ
鏡に/映しても/顔の向こうが/見えるだけだから/顔で自分を/確かめることも/難しい
特に/昼間は/合わす顔がないわけだから/困る
だからといって/昼間用の仮面を/用意する気にもなれずに/晴れた日は/空の方を/見る
最近の読書10冊(予定を含む)
- 「おばさん」がいっぱい(執筆)三辺律子(『図書』岩波書店定期購読誌2021年4月号/本をひらいた時)
- 七万人のアッシリア人 ウイリアム・サローヤン(著)斉藤数衛(訳)現代アメリカ作家集上巻所収1971年初版
- 季(とき)間中ケイ子(筆)ほか/日本児童文学2021年3・4月号 特集25年後の子どもたちへ
- カフカらしくないカフカ 明星聖子(著)
- 雪の練習生 多和田葉子(著)
- 物理の館物語(著者不明)/小川洋子『物理の館物語』参照(柴田元幸編『短篇集』所収)
- 『還れぬ家』『空にみずうみ』佐伯一麦(著)
- 十一年目の枇杷(執筆)佐伯一麦(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/巻頭)
- もっともらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/らしさについて考える④)
- 【続】フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い化面』小野正嗣(筆)NHK100分de名著