帯の表紙部分にある武田砂鉄さんのコメントは絶妙。
ボクには理解できるよ、という傲慢な批評を、細かく切り刻む鋭利さに痺れた。
1990年代に生まれた写真の新潮流を、写真家業界のあっちとこっちの目線、さらにメディア目線まで丹念に「本音」を読み解いた怪著(であり快著だ)! はっきり言って、これは論文(あとがきによれば原型は修士論文だという、やっぱり)。400頁近くあって重いのに、表紙デザインといいイラストといい、その軽快さのお陰で手に取ろうという気になった。すばらしいお仕事です。原耕一さんと事務所TROUTのヒチローさん、せいさん。
それにつけても、写真家の男性天下世界を描き斬ってくれたことにより見えてくるのは、写真家だけの話じゃないってこと。ありとあらゆる職業ジャンルでこうした読み物が出尽くしてしまうくらい過激に叫べばいいのだ、われわれの国では。(そうそう変わるまいと諦めるまえに、できることはある。)
最後に、付け足しみたいではあるが、帯の裏表紙部分のコメントもイイぞ。写真に興味あるなしを問わず、女性にも女の子にも(この区別がいるかどうかは読み手次第)本書を読んで貰いたい表れと見た。
ガーリーってかわいいと思う?/ううん、めちゃくちゃ強くて/しなやかでカッコいい。/ほんとは知らなかった/たくさんのこと、/無かったことにされてきた/かつての女の子たちの抵抗と戦い、/今を生きる私たちにゆりえさんが/誇りと尊厳について/投げかけてくれる。/新しい時代の女の子革命のための/指南の書!/とにかくただただ話がしたい。/これから私たちが/どうやって生きるかについて。/太田莉菜
最近の読書10冊(予定を含む)
- 映画にしなければならないもの(INTERVIEW)瀬々敬久・佐藤健・阿部寛/キネマ旬報2021年10月上旬号
- 小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌/回顧展公式カタログ兼書籍
- シンポジウム「明日に向けて、何をどう書いていくか」日本児童文学者協会2021公開研究会/案内リーフレット
- 「ぞうもかわいそう」再びー『かわいそうなぞう』の虚偽(筆)長谷川潮/『日本児童文学』2021年9・10月号特集「伝える」を問い直す
- レイシズムを考える(編)清原悠
- 咀嚼不能の石(筆)古矢旬/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号巻頭
- 読書の敵たち(筆)大澤聡/『図書』岩波書店定期購読誌2021年9月号所収
- 宵の蒼(著)ロバート・オレン バトラー(訳)不二淑子/「短編画廊 絵から生まれた17の物語」所収 (ハーパーコリンズ・フィクション)
- 木村素衞――「表現愛」の美学 (再発見 日本の哲学)(著) 小田部胤久
- たまごのはなし(作・絵)しおたにまみこ