「言葉」と「ことば」を使い分けている著者のこころねが愛おしい。ろう者に対してつい「やさしいふり」をしてしまうわたしが居るのを実感させられるが、それ以上に、感動するんだなあ、エピソードのどれもこれも。聴者家族に生まれた聾者の著者が、聾家族に生まれた聾者の妻とのあいだに、聞こえる児が生まれ、その一日一日の物語は、想像を超えているとしかいいようがない。
かれらに寄せられるさまざまな善意の助言がまた、一層とかれらを悩ませている現実も重い。
最近、聞こえるこども(コーダ)が産まれたろう者の友達が言っていたことが、棘になってこころに引っかかっている。
「親と手話で話ができたからって、将来的には役に立たないでしょう。(中略)親子で会話ができることよりも、こどもが自分で生きていけるようにするべき」
そんな意見とはまったく逆のことを言う人もいた。(中略)どうすればいいのか、正直なところ、よくわからない。
つまるところは、こどもに対する愛情を感じているか、どう表現しているか、に帰結するきがする。聾者であるかどうか以前の問題として。そして、聞こえているわたしが一番学ばなければいけないのは、発語としての「言葉」だけが「ことば」じゃないって意識なのだ。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 迷子の魂(絵本)Olga Tokarczuk(作) Joanna Concejo(絵)
- 男らしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2020年12月号/らしさについて考える②)
- 杜甫の作った冷やし麺(執筆)興膳宏(『図書』岩波書店定期購読誌2020年12月号)
- 東洋堂古書目録 令和2年秋号
- しろいみつばち きくちちきの絵本(暮しの手帖Winter 2020-21 特別付録)
- 和歌史 なぜ千年を越えて続いたか(角川選書)
- おふろでちゃぷちゃぷ 松谷みよ子(文) 岩崎ちひろ(絵)
- 宮津昭彦集 自註現代俳句シリーズⅠ期16
- 永遠の緑 浅田次郎著 KEIBA CATALOG vol.18
- 英語発達小史(岩波文庫)H.ブラッドリ著 寺澤芳雄訳