図書館でぶらぶらしたから出遭えた一冊(滞在わずか20分)。従来特殊あつかいだった字形「蘆手」の存在に光を当てて、水面にうかぶようなデザイン性高い(遊び感覚?の)文字「蘆手」から「かな文字」誕生という可能性に言及している。
一般には万葉仮名(男手)の変形として女手、片仮名が生まれたとされ、絵と見紛う蘆手はいわば異端視されてきたのは、男性中心的な史観ゆえだったのかもしれない。今でこそ装幀者・編集者・印刷技術者が個人として尊重される部分もあるが、むかしは裏方に徹してきた職種だろうから、陰の扱いであったのは歴史の必然といえる。それが著者の手によって表舞台に出てきたのだと考えると、歴史を研究するうえで未開拓の領域は無限とさえいえよう。
あと、ほんに些末かもしれないが、著者の姓「玉蟲」って凄いルーツがあるのかなあと気になって仕方ない。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 「おばさん」がいっぱい(執筆)三辺律子(『図書』岩波書店定期購読誌2021年4月号/本をひらいた時)
- 七万人のアッシリア人 ウイリアム・サローヤン(著)斉藤数衛(訳)現代アメリカ作家集上巻所収1971年初版
- 季(とき)間中ケイ子(筆)ほか/日本児童文学2021年3・4月号 特集25年後の子どもたちへ
- カフカらしくないカフカ 明星聖子(著)
- 雪の練習生 多和田葉子(著)
- 物理の館物語(著者不明)/小川洋子『物理の館物語』参照(柴田元幸編『短篇集』所収)
- 『還れぬ家』『空にみずうみ』佐伯一麦(著)
- 十一年目の枇杷(執筆)佐伯一麦(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/巻頭)
- もっともらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/らしさについて考える④)
- 【続】フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い化面』小野正嗣(筆)NHK100分de名著