図書館でぶらぶらしたから出遭えた一冊(滞在わずか20分)。従来特殊あつかいだった字形「蘆手」の存在に光を当てて、水面にうかぶようなデザイン性高い(遊び感覚?の)文字「蘆手」から「かな文字」誕生という可能性に言及している。
一般には万葉仮名(男手)の変形として女手、片仮名が生まれたとされ、絵と見紛う蘆手はいわば異端視されてきたのは、男性中心的な史観ゆえだったのかもしれない。今でこそ装幀者・編集者・印刷技術者が個人として尊重される部分もあるが、むかしは裏方に徹してきた職種だろうから、陰の扱いであったのは歴史の必然といえる。それが著者の手によって表舞台に出てきたのだと考えると、歴史を研究するうえで未開拓の領域は無限とさえいえよう。
あと、ほんに些末かもしれないが、著者の姓「玉蟲」って凄いルーツがあるのかなあと気になって仕方ない。
最近の読書10冊(予定を含む)
- サン=テグジュペリ Saint-Exupéry R.M.アルベレス(著)中村三郎(訳)1998年改訂版
- においのカゴ 石井桃子創作集 大西香織(編集)
- 日本美術のことばと絵 玉蟲敏子(著)角川選書571
- 考える江戸の人々 自立する生き方をさぐる 柴田純(著)
- だまされ屋さん 星野智幸(著)
- 日本幼児史 子どもへのまなざし 柴田純(著)
- 雪の森のリサベット アストリッド・リンドグレーン(作)イロン・ヴィークランド(絵)石井登志子(訳)
- 子どもらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号/らしさについて考える③)
- ブリキの卵/この世は少し不思議 恩田陸(著)「タマゴマジック」所収・河北新報出版センター発行
- 分断を超えるハンセン病文学の言葉(執筆)木村哲也(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号)