図書館でぶらぶらしたから出遭えた一冊(滞在わずか20分)。従来特殊あつかいだった字形「蘆手」の存在に光を当てて、水面にうかぶようなデザイン性高い(遊び感覚?の)文字「蘆手」から「かな文字」誕生という可能性に言及している。
一般には万葉仮名(男手)の変形として女手、片仮名が生まれたとされ、絵と見紛う蘆手はいわば異端視されてきたのは、男性中心的な史観ゆえだったのかもしれない。今でこそ装幀者・編集者・印刷技術者が個人として尊重される部分もあるが、むかしは裏方に徹してきた職種だろうから、陰の扱いであったのは歴史の必然といえる。それが著者の手によって表舞台に出てきたのだと考えると、歴史を研究するうえで未開拓の領域は無限とさえいえよう。
あと、ほんに些末かもしれないが、著者の姓「玉蟲」って凄いルーツがあるのかなあと気になって仕方ない。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 春の宵(著)クォン・ヨソン(訳)橋本智保/韓国女性文学シリーズ4
- アジの味(著)クォン・ヨソン(訳)斎藤真理子(頭木弘樹編『絶望書店』所収)
- ゆるく考える(著)東浩紀 (河出文庫)
- 他所者の神戸(執筆)尾原宏之(『図書』岩波書店定期購読誌2021年6月号)
- 実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル(著)鬼澤忍(訳)
- 「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ 長島有里枝(著)
- 未確認ハンバーグ弁当(作)日向理恵子/日本児童文学2021年5・6月号
- 雲と空のはざまで(執筆)大河原 愛(『図書』岩波書店定期購読誌2021年5月号/巻頭)
- お探し物は図書室まで 青山美智子(著)さくだゆうこ(羊毛フェルト)写真(小嶋淑子)装丁(須田杏菜)
- 三の隣は五号室 長嶋有(著)中公文庫