2017年に多発性骨髄腫に罹った写真家による人生相談コラムから選ばれた32選。難治の病者なのに頑張る人だから相談される、と思いがちだがそうじゃない。幡野広志だからなんだ。相談されることを好んでもいないし、自分の能力を誇示したりもしない。ただ、相談されるから応答しているだけ。彼は癌ばかりでなく、自身も妻も家族のことで苦しんだ時代を経て今がある(という事実も相談者への返答に応じて開示してるだけ)。相談者の話に向き合う距離感こそ彼の持ち味であり、本人もそれを大切にしている。冷静だけど冷たくない。理解しにくい境遇でも理解しようと全力。直言するが恩着せがましくない。これは想像でしかないが、どんな時も的外れなアドバイスにならない神秘性を秘めているのでは。
彼の写真作品もまた人柄というか生きざまを表しているようだ。人物がほとんど登場しない写真なのに、ヒトの想いみたいなものが彷彿としてくる。人間の表面に接しながらも、内なる世界を感受してしまう眼力を有しているのだろうか。先天的かもしれないし、後天的かもしれない。
- サン=テグジュペリ Saint-Exupéry R.M.アルベレス(著)中村三郎(訳)1998年改訂版
- においのカゴ 石井桃子創作集 大西香織(編集)
- 日本美術のことばと絵 玉蟲敏子(著)角川選書571
- 考える江戸の人々 自立する生き方をさぐる 柴田純(著)
- だまされ屋さん 星野智幸(著)
- 日本幼児史 子どもへのまなざし 柴田純(著)
- 雪の森のリサベット アストリッド・リンドグレーン(作)イロン・ヴィークランド(絵)石井登志子(訳)
- 子どもらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号/らしさについて考える③)
- ブリキの卵/この世は少し不思議 恩田陸(著)「タマゴマジック」所収・河北新報出版センター発行
- 分断を超えるハンセン病文学の言葉(執筆)木村哲也(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号)