2017年に多発性骨髄腫に罹った写真家による人生相談コラムから選ばれた32選。難治の病者なのに頑張る人だから相談される、と思いがちだがそうじゃない。幡野広志だからなんだ。相談されることを好んでもいないし、自分の能力を誇示したりもしない。ただ、相談されるから応答しているだけ。彼は癌ばかりでなく、自身も妻も家族のことで苦しんだ時代を経て今がある(という事実も相談者への返答に応じて開示してるだけ)。相談者の話に向き合う距離感こそ彼の持ち味であり、本人もそれを大切にしている。冷静だけど冷たくない。理解しにくい境遇でも理解しようと全力。直言するが恩着せがましくない。これは想像でしかないが、どんな時も的外れなアドバイスにならない神秘性を秘めているのでは。
彼の写真作品もまた人柄というか生きざまを表しているようだ。人物がほとんど登場しない写真なのに、ヒトの想いみたいなものが彷彿としてくる。人間の表面に接しながらも、内なる世界を感受してしまう眼力を有しているのだろうか。先天的かもしれないし、後天的かもしれない。
- 春の宵(著)クォン・ヨソン(訳)橋本智保/韓国女性文学シリーズ4
- アジの味(著)クォン・ヨソン(訳)斎藤真理子(頭木弘樹編『絶望書店』所収)
- ゆるく考える(著)東浩紀 (河出文庫)
- 他所者の神戸(執筆)尾原宏之(『図書』岩波書店定期購読誌2021年6月号)
- 実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル(著)鬼澤忍(訳)
- 「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ 長島有里枝(著)
- 未確認ハンバーグ弁当(作)日向理恵子/日本児童文学2021年5・6月号
- 雲と空のはざまで(執筆)大河原 愛(『図書』岩波書店定期購読誌2021年5月号/巻頭)
- お探し物は図書室まで 青山美智子(著)さくだゆうこ(羊毛フェルト)写真(小嶋淑子)装丁(須田杏菜)
- 三の隣は五号室 長嶋有(著)中公文庫