令和2年傑出の小説だ、わたしのなかで。女と男が交互にだす手紙14通だけの物語。この手の文通ストーリーは珍奇ではないが、差出人の2人をそれぞれベテラン作家が分身のように担当しての回想連作が、一から十まで(正確には十四まで)ずっと読者にとっての謎解きに仕立てられている。一通目で”私”は「まぶたをずっと閉じたままでいる」決心をしらせる。いきなり感はその後もハンパじゃない。しかも多様な(それでいて繋がりを含ませた)有名な文献たち(典型はアンネの日記)によって重厚深遠さを増している。ふたりの身に過去に何があったのか、最後の最後まで真相はふたりの記憶から少しずつしか吐露されない。読後、切ない思いが此の世に充満するばかり。。。命の尊厳やら一筋の涙の重さ、そんな陳腐な纏めで括りたくないものが一人ひとりの人生を彩っている。なんだか、ちょっと古い欧州の恋愛映画を字幕を追いつつ観たあとみたいな気分。(ひとに...わかるかなあ、わかんねえだろうなあ。)
- 迷子の魂(絵本)Olga Tokarczuk(作) Joanna Concejo(絵)
- 男らしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2020年12月号/らしさについて考える②)
- 杜甫の作った冷やし麺(執筆)興膳宏(『図書』岩波書店定期購読誌2020年12月号)
- 東洋堂古書目録 令和2年秋号
- しろいみつばち きくちちきの絵本(暮しの手帖Winter 2020-21 特別付録)
- 和歌史 なぜ千年を越えて続いたか(角川選書)
- おふろでちゃぷちゃぷ 松谷みよ子(文) 岩崎ちひろ(絵)
- 宮津昭彦集 自註現代俳句シリーズⅠ期16
- 永遠の緑 浅田次郎著 KEIBA CATALOG vol.18
- 英語発達小史(岩波文庫)H.ブラッドリ著 寺澤芳雄訳