令和2年傑出の小説だ、わたしのなかで。女と男が交互にだす手紙14通だけの物語。この手の文通ストーリーは珍奇ではないが、差出人の2人をそれぞれベテラン作家が分身のように担当しての回想連作が、一から十まで(正確には十四まで)ずっと読者にとっての謎解きに仕立てられている。一通目で”私”は「まぶたをずっと閉じたままでいる」決心をしらせる。いきなり感はその後もハンパじゃない。しかも多様な(それでいて繋がりを含ませた)有名な文献たち(典型はアンネの日記)によって重厚深遠さを増している。ふたりの身に過去に何があったのか、最後の最後まで真相はふたりの記憶から少しずつしか吐露されない。読後、切ない思いが此の世に充満するばかり。。。命の尊厳やら一筋の涙の重さ、そんな陳腐な纏めで括りたくないものが一人ひとりの人生を彩っている。なんだか、ちょっと古い欧州の恋愛映画を字幕を追いつつ観たあとみたいな気分。(ひとに...わかるかなあ、わかんねえだろうなあ。)
- 戦争は女の顔をしていない(著)スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(訳)三浦みどり
- 徹底して戦争と死について書く(執筆)沼野充義(『図書』岩波書店定期購読誌2020年11月号巻頭)
- 夢の舟唄(德永民平詩集)
- わさびの日本史 (著)山根京子
- 国家への道順(著)柳美里
- 正義のゲーム理論的基礎(著)ケン・ビンモア(訳)栗林寛幸
- 社会契約論ーーホッブス、ヒューム、ルソー、ロールズ(ちくま新書)(著)重田園江
- 40代から始めよう! あぶら身をごっそり落とす きくち体操
- スケール 上──生命、都市、経済をめぐる普遍的法則(著)ジョフリー・ウェスト(訳)山形浩生・森本 正史
- 多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)