最近、性差・女らしさ(・男らしさ)にまつわる著作に遭遇する確率が高くて、惹き寄せられているのかもしれない。本書も古本屋で発見。女性の権利にはじまり社会的性差解消では先進国のフランスで1984年に(邦訳は1992年)世に問うた画期的論考。もう四半世紀も前の著でフランスではこのあと格段に進歩しているのに、日本ではどうだ? この本の主張が今ちょうど最前線くらいじゃなかろうか。
著者ミシェル・ペローさんはもともと歴史学者として近現代の労働問題に精通した方だが、女性の労働という視点をいち早く有した先達だ。フランスは欧州のなかでもフェミニズムの先頭だったと思うが、それでも1980年代に漸く女性研究者が綴る女性史というジャンルが芽生えたようだ。女性の権利拡張が進んでも、学問分野でも社会的性差の壁はいつまでも厚かったのだ。その象徴が「母親」の聖職化だ。裏返せば産まない、産めない女性は卑しめられる社会。日本とくらべて遙かに聖母という宗教観、家庭観が根強いことが大きな要因に映る。
そのフランスで2000年には政治の現場で「数的対等」法が成立し、女性議員が台頭しつつあるのは本書刊行の波及効果とも言えるのだ。その流れが本書の新版(邦訳2001年刊)には記されてある。端的に言えば、この本をはじめとした女性史の刊行発表の流れが、女性の意識変革を高め、男性の意識も変化し、政治における男女同数・対等へと進歩せしめたといえよう。
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