福島の甲状腺検査と過剰診断 子どもたちのために何ができるか(著)髙野徹・緑川早苗・大津留晶・菊池誠・児玉一八

新刊予約本が届く。重いテーマに不釣り合いとも感じられる表紙デザインのみちびきに身を委ねてみたのだが、想定通り、専門的な情報満載(をずいぶんと咀嚼して素人に伝えようとする意図だけはしかと受納しつつ)で、ほんわかしたムードは皆無。わずかに、柔らかいタッチのイラストが時折挿入され、丸みを帯びたフォントの勢いに乗って重大事件の深層について読み進めることとなる。

はっきりいって、本書は、日本の子どもたちの養育・保育・教育などにたずさわっているすべての人が知っておかなければならない医療倫理の書だ。より的確にいおうとするなら、福島の子どもたちの身に起こっているスクーリング事実を知って、みずから考え、アクションを起こさなければならない喫緊の倫理書に他ならない。ただ、読者を福島の人びとに限定する考え方にわたしは賛同できない。福島の問題を日本の問題と受け止めること、そうでなければこの国の医療は滅びるよ、ほんとに。

【追記】あとがきに高野徹さんが書いておられる文章を引用しておきたい。[2021-08-14]

(前文略)本書の企画を立ち上げていただいたあけび書房の岡林信一さんに感謝を申しあげたいと思います。そもそも過剰診断の問題にかかわるとろくなことがありません。誰からも(被害者からさえもです)感謝されないし、多くの人たちから邪魔者扱いされ、誤解されて非難を受ける、というのがお決まりのコースです。そんな中で、火中の栗を拾ってくれる岡林さんのような方が一人、また一人と現れてやっと本書が発刊できる環境が整ったのです。

あとがき・高野徹

以下、これから読む人のためにも目次を示しておく。

mokuji1