150年前のイギリス発のユートピア譚は宗教(この場合はキリスト教)軽視や優生思想に対する強烈な風刺だったのかもしれませんが、現代人からすれば警告・預言の書だったのに、われわれは残念な道を選択し続けているとしかいえない。そんな意味で新訳のもとに本書を読む価値は、陳腐な政治家発言やニュースバラエティ番組を眺める何万倍もあるぞ。
主人公が憧れて旅したエレホン国では人びとの体が奇跡的にというほど美しい。一例をあげれば、女性の表情は女神のようであり、男性はエジプトとイタリアとギリシャのハンサムのいいとこ取りをした顔立ちとか。経済や宗教についても知れば知るほど、・・・あとは略。
装幀についても一言。じつにオシャレだ。カバーに小さく開けられた四角い小窓から見えているのは、”St.Jerome Reading in a Landscape” 風景画に見せていながら聖人ジェロームの読書姿になっている(;作者はGiovanni Bellini)。キリスト教圏のひとの眼にはどんなふうに映るのだろうか。
- 迷子の魂(絵本)Olga Tokarczuk(作) Joanna Concejo(絵)
- 男らしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2020年12月号/らしさについて考える②)
- 杜甫の作った冷やし麺(執筆)興膳宏(『図書』岩波書店定期購読誌2020年12月号)
- 東洋堂古書目録 令和2年秋号
- しろいみつばち きくちちきの絵本(暮しの手帖Winter 2020-21 特別付録)
- 和歌史 なぜ千年を越えて続いたか(角川選書)
- おふろでちゃぷちゃぷ 松谷みよ子(文) 岩崎ちひろ(絵)
- 宮津昭彦集 自註現代俳句シリーズⅠ期16
- 永遠の緑 浅田次郎著 KEIBA CATALOG vol.18
- 英語発達小史(岩波文庫)H.ブラッドリ著 寺澤芳雄訳