150年前のイギリス発のユートピア譚は宗教(この場合はキリスト教)軽視や優生思想に対する強烈な風刺だったのかもしれませんが、現代人からすれば警告・預言の書だったのに、われわれは残念な道を選択し続けているとしかいえない。そんな意味で新訳のもとに本書を読む価値は、陳腐な政治家発言やニュースバラエティ番組を眺める何万倍もあるぞ。
主人公が憧れて旅したエレホン国では人びとの体が奇跡的にというほど美しい。一例をあげれば、女性の表情は女神のようであり、男性はエジプトとイタリアとギリシャのハンサムのいいとこ取りをした顔立ちとか。経済や宗教についても知れば知るほど、・・・あとは略。
装幀についても一言。じつにオシャレだ。カバーに小さく開けられた四角い小窓から見えているのは、”St.Jerome Reading in a Landscape” 風景画に見せていながら聖人ジェロームの読書姿になっている(;作者はGiovanni Bellini)。キリスト教圏のひとの眼にはどんなふうに映るのだろうか。
- 生まれてこないほうが良かったのか? ――生命の哲学へ! (筑摩選書)森岡正博著
- 霊と肉 山折哲雄著
- ほんとさいこうの日 レイン・スミス作/青山南訳
- 寝てもとれない疲れをとる本(PHP文庫)中根一著
- いなくなれ、群青(新潮文庫)河野裕著
- 幸せになりたければねこと暮らしなさい 樺木宏(著)かばきみなこ(監修)
- あの日からの或る日の絵とことば 筒井大介編
- 女性史は可能か UNE HISTOIRE DES FEMMES EST-ELLE POSSIBLE? ミシェル・ペロー編 (邦訳初版)
- 日本語の連続/不連続 百年前の「かきことば」を読む (平凡社新書)今野真二著
- 目利きの本屋さんに聞いてみた(暮しの手帖Winter 2020-21)