コロナ禍で物言う哲学者のジョルジョ・アガンベン氏が指摘している、政治家の作る「例外状態」問題はこの2年で始まったわけではなかった。9.11テロに始まる米国の対テロ政策以降ずっと法的「例外状態」が野放しだったという下地が世界に出来ていたのか。近頃のアフガニスタン問題にからめて、そこに切り込んだ論評を初めて読んだ。一見平和な『図書』が時代の暗部を読者に突きつけてくれるとは。古矢旬さんに感謝。哲学者の言説をしかと受け止めて米国に物言うことのできる日本の政治家が現れたなら、少しはこの国も進歩するだろう。そのためには、 ジョルジョ・アガンベンさんの著作が邦訳でもっともっと読まれないと、と思う。(かくいうわたしも、いまだ読んでないのだけれど。)
『私たちはどこにいるのか?』(2021刊)
もうすぐ、9.11が巡ってくる。どこぞで盛り上がることを期待しつつ、わたしなりにアガンベン著作を咀嚼しようか。
最近の読書10冊(願望を含む)
- サン=テグジュペリ Saint-Exupéry R.M.アルベレス(著)中村三郎(訳)1998年改訂版
- においのカゴ 石井桃子創作集 大西香織(編集)
- 日本美術のことばと絵 玉蟲敏子(著)角川選書571
- 考える江戸の人々 自立する生き方をさぐる 柴田純(著)
- だまされ屋さん 星野智幸(著)
- 日本幼児史 子どもへのまなざし 柴田純(著)
- 雪の森のリサベット アストリッド・リンドグレーン(作)イロン・ヴィークランド(絵)石井登志子(訳)
- 子どもらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号/らしさについて考える③)
- ブリキの卵/この世は少し不思議 恩田陸(著)「タマゴマジック」所収・河北新報出版センター発行
- 分断を超えるハンセン病文学の言葉(執筆)木村哲也(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号)