エドワード・ホッパーの絵だから成り立つ企画にちがいない、と妙に確信してしまう。彼の画たちを題材にした短編小説アンソロジーのなかでも、とってもユニークな「ピエロが客として真ん中にいるレストラン」の絵がどんな物語に仕上がったのかわくわくしながら読む。ピエロはパントマイムさながら黙したまま、別の人間の視点ではじまる描写。画中の人物が生き生きとしている。もちろん、ピエロの役割は小さくなくて、遠い過去の物語までもが引き出されてくる、そんな宵の物語。ごちそうさまでした。
あとから知ったことだが、エドワード・ホッパーの作品がコロナ禍の米国で昨年注目されていたという。ピエロのいる絵はそうでもないが、他の多くは独り佇む構図で、コロナ禍の風景と重ねて賞翫されたらしい。そんなわけで急遽この企画が、というわけではあるまいが、時代が、彼の絵を欲しているということなのだろう。
最近の読書10冊(願望を含む)
- 迷子の魂(絵本)Olga Tokarczuk(作) Joanna Concejo(絵)
- 男らしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2020年12月号/らしさについて考える②)
- 杜甫の作った冷やし麺(執筆)興膳宏(『図書』岩波書店定期購読誌2020年12月号)
- 東洋堂古書目録 令和2年秋号
- しろいみつばち きくちちきの絵本(暮しの手帖Winter 2020-21 特別付録)
- 和歌史 なぜ千年を越えて続いたか(角川選書)
- おふろでちゃぷちゃぷ 松谷みよ子(文) 岩崎ちひろ(絵)
- 宮津昭彦集 自註現代俳句シリーズⅠ期16
- 永遠の緑 浅田次郎著 KEIBA CATALOG vol.18
- 英語発達小史(岩波文庫)H.ブラッドリ著 寺澤芳雄訳