エドワード・ホッパーの絵だから成り立つ企画にちがいない、と妙に確信してしまう。彼の画たちを題材にした短編小説アンソロジーのなかでも、とってもユニークな「ピエロが客として真ん中にいるレストラン」の絵がどんな物語に仕上がったのかわくわくしながら読む。ピエロはパントマイムさながら黙したまま、別の人間の視点ではじまる描写。画中の人物が生き生きとしている。もちろん、ピエロの役割は小さくなくて、遠い過去の物語までもが引き出されてくる、そんな宵の物語。ごちそうさまでした。
あとから知ったことだが、エドワード・ホッパーの作品がコロナ禍の米国で昨年注目されていたという。ピエロのいる絵はそうでもないが、他の多くは独り佇む構図で、コロナ禍の風景と重ねて賞翫されたらしい。そんなわけで急遽この企画が、というわけではあるまいが、時代が、彼の絵を欲しているということなのだろう。
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