
失われた藝術作品を集めた美術館があったら・・・そんな「はしがき」の言葉を反芻する大晦日というのは過去に思いを馳せるにピッタリすぎる。平和な日常なんてものは虚構でしかないことをコロナ禍の年で誰しも再認識したのだけれど、美術館に所蔵されたいる作品がいつ失われるかしれないなどと考えたことはなかった。されど、世界中の美術館の歴史を俯瞰すれば、火災、盗難、戦争、破壊行為によって藝術作品もまた無常きわまりないことが知れる。そう思うと、観るチャンスがあるなら観ておかなければ、との意欲が漲るのだ。
加えて、なるほど、と膝討ちしたのは、喪失以前に、はたして実在したのかと疑念を抱かせる作品もまた少ないこと。歴史に記述されていても、信用のおけるなんぴとも鑑賞した記録すら見当たらない、いわば神話的作品の存在。
(大晦日で何かとのんびり読破できていないのだけれど)気になって仕方ない箇所が一つ。1972年生まれの著者のプロフィール。美術史のほか建築史や犯罪史を学んだ末に、ローマを拠点に美術犯罪調査機構を設立し、なんと小説まで仕上げているのだ。その作品『名画消失』(早川書房)というから、ぜひ読んでみたい。
- 「おばさん」がいっぱい(執筆)三辺律子(『図書』岩波書店定期購読誌2021年4月号/本をひらいた時)
- 七万人のアッシリア人 ウイリアム・サローヤン(著)斉藤数衛(訳)現代アメリカ作家集上巻所収1971年初版
- 季(とき)間中ケイ子(筆)ほか/日本児童文学2021年3・4月号 特集25年後の子どもたちへ
- カフカらしくないカフカ 明星聖子(著)
- 雪の練習生 多和田葉子(著)
- 物理の館物語(著者不明)/小川洋子『物理の館物語』参照(柴田元幸編『短篇集』所収)
- 『還れぬ家』『空にみずうみ』佐伯一麦(著)
- 十一年目の枇杷(執筆)佐伯一麦(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/巻頭)
- もっともらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/らしさについて考える④)
- 【続】フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い化面』小野正嗣(筆)NHK100分de名著