
失われた藝術作品を集めた美術館があったら・・・そんな「はしがき」の言葉を反芻する大晦日というのは過去に思いを馳せるにピッタリすぎる。平和な日常なんてものは虚構でしかないことをコロナ禍の年で誰しも再認識したのだけれど、美術館に所蔵されたいる作品がいつ失われるかしれないなどと考えたことはなかった。されど、世界中の美術館の歴史を俯瞰すれば、火災、盗難、戦争、破壊行為によって藝術作品もまた無常きわまりないことが知れる。そう思うと、観るチャンスがあるなら観ておかなければ、との意欲が漲るのだ。
加えて、なるほど、と膝討ちしたのは、喪失以前に、はたして実在したのかと疑念を抱かせる作品もまた少ないこと。歴史に記述されていても、信用のおけるなんぴとも鑑賞した記録すら見当たらない、いわば神話的作品の存在。
(大晦日で何かとのんびり読破できていないのだけれど)気になって仕方ない箇所が一つ。1972年生まれの著者のプロフィール。美術史のほか建築史や犯罪史を学んだ末に、ローマを拠点に美術犯罪調査機構を設立し、なんと小説まで仕上げているのだ。その作品『名画消失』(早川書房)というから、ぜひ読んでみたい。
- 春の宵(著)クォン・ヨソン(訳)橋本智保/韓国女性文学シリーズ4
- アジの味(著)クォン・ヨソン(訳)斎藤真理子(頭木弘樹編『絶望書店』所収)
- ゆるく考える(著)東浩紀 (河出文庫)
- 他所者の神戸(執筆)尾原宏之(『図書』岩波書店定期購読誌2021年6月号)
- 実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル(著)鬼澤忍(訳)
- 「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ 長島有里枝(著)
- 未確認ハンバーグ弁当(作)日向理恵子/日本児童文学2021年5・6月号
- 雲と空のはざまで(執筆)大河原 愛(『図書』岩波書店定期購読誌2021年5月号/巻頭)
- お探し物は図書室まで 青山美智子(著)さくだゆうこ(羊毛フェルト)写真(小嶋淑子)装丁(須田杏菜)
- 三の隣は五号室 長嶋有(著)中公文庫