藤井聡太 すでに棋士として完璧に近い(谷川浩司筆・文藝春秋2021新年特別号所収)

先輩一流棋士のみが語れる一流棋士の実力というものは、凡庸な人間が足を踏み入れることのない世界に違いないが、語られる言葉の何とずっしり響くことだろ。

棋聖戦での一手には驚かされました。・・・あと一勝で棋聖というところでもう少し安全な一手を選ぶかと思ったのですが、あの局面からは、彼にとってはタイトルよりも、純粋に強くなることの方が大切なのだということがひしひしと伝わってきました。

じっと考え抜く力が素晴らしい。昭和の時代は、とにかく盤の前に座ってからが勝負というところがありました。けれど、一世代下の羽生善治九段ら平成の時代になると、事前の準備を念入りに行うようになり、序盤の体系化が進みました。ただその流れにおいても・・・藤井二冠の将棋は正統派で、羽生さんに重なるところがあります。序盤から考え、相手が得意で自分があまり経験のない形に飛び込む。そうやって、相手の豊富な知識を自分のものにしようとする貪欲さ。・・・事前の準備をいくらしても、実際の対局で自力で考えて出す結論にはかないませんから。

勝負強さ、本番の強さについて、世界は違えど、わたしもじっくり考えたいもんだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。