自分の中で長年もやもやしていた「言葉にならない何か」にひとつの名前を授けてもらった気がする。人はなぜ読書するのか? 「本」の世界に意味を求めがちだが、「本という考え方」の世界、そういう世界観こそが人を吸引しているのだ。
本という文化が長年かかって培ってきたものは、本に書かれているものを通して、そこに書かれていないものを想像させるちからです。今日、わたしたちの社会がぶつかっている問題は、書かれていないものを必要とする考え方をなくしてしまったことに起因している、そのためにとまどっているように思われるのです。
著者は、わたしたちの既成概念をひっくり返してくれる、まさに「本という考え方」をストレートに突き付けている。
読書というのは、「私」を探している本に出会うという経験です。(中略)のぞむべきは、本は「私」の友人、というあり方でなく、「私」は本の友人、というあり方です。
子どもの本に対する考え方には大いに賛成。わたしは本屋でも図書館でも、一人で児童書コーナーをうろうろするのだけれど、それって「変なおじさん」視されていて、多くの人は「しない」行為というのにはビックリした(笑)。
子どもの本についての、これまでのような「子どもだけが読むべき本」とするような考え方の縛りになっている先入観を崩してゆく。そうすることで、子どもの本の世界を、子どもたちと大人たちとが一緒にそこにいる想像力の場にしてゆかないと、子どもたちの世界からも、大人たちの世界からも、何か大切なものがこぼれていってしまうのではないかと怖れます。
最近の読書10冊(願望を含む)
- サン=テグジュペリ Saint-Exupéry R.M.アルベレス(著)中村三郎(訳)1998年改訂版
- においのカゴ 石井桃子創作集 大西香織(編集)
- 日本美術のことばと絵 玉蟲敏子(著)角川選書571
- 考える江戸の人々 自立する生き方をさぐる 柴田純(著)
- だまされ屋さん 星野智幸(著)
- 日本幼児史 子どもへのまなざし 柴田純(著)
- 雪の森のリサベット アストリッド・リンドグレーン(作)イロン・ヴィークランド(絵)石井登志子(訳)
- 子どもらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号/らしさについて考える③)
- ブリキの卵/この世は少し不思議 恩田陸(著)「タマゴマジック」所収・河北新報出版センター発行
- 分断を超えるハンセン病文学の言葉(執筆)木村哲也(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号)