自分の中で長年もやもやしていた「言葉にならない何か」にひとつの名前を授けてもらった気がする。人はなぜ読書するのか? 「本」の世界に意味を求めがちだが、「本という考え方」の世界、そういう世界観こそが人を吸引しているのだ。
本という文化が長年かかって培ってきたものは、本に書かれているものを通して、そこに書かれていないものを想像させるちからです。今日、わたしたちの社会がぶつかっている問題は、書かれていないものを必要とする考え方をなくしてしまったことに起因している、そのためにとまどっているように思われるのです。
著者は、わたしたちの既成概念をひっくり返してくれる、まさに「本という考え方」をストレートに突き付けている。
読書というのは、「私」を探している本に出会うという経験です。(中略)のぞむべきは、本は「私」の友人、というあり方でなく、「私」は本の友人、というあり方です。
子どもの本に対する考え方には大いに賛成。わたしは本屋でも図書館でも、一人で児童書コーナーをうろうろするのだけれど、それって「変なおじさん」視されていて、多くの人は「しない」行為というのにはビックリした(笑)。
子どもの本についての、これまでのような「子どもだけが読むべき本」とするような考え方の縛りになっている先入観を崩してゆく。そうすることで、子どもの本の世界を、子どもたちと大人たちとが一緒にそこにいる想像力の場にしてゆかないと、子どもたちの世界からも、大人たちの世界からも、何か大切なものがこぼれていってしまうのではないかと怖れます。
最近の読書10冊(願望を含む)
- 「おばさん」がいっぱい(執筆)三辺律子(『図書』岩波書店定期購読誌2021年4月号/本をひらいた時)
- 七万人のアッシリア人 ウイリアム・サローヤン(著)斉藤数衛(訳)現代アメリカ作家集上巻所収1971年初版
- 季(とき)間中ケイ子(筆)ほか/日本児童文学2021年3・4月号 特集25年後の子どもたちへ
- カフカらしくないカフカ 明星聖子(著)
- 雪の練習生 多和田葉子(著)
- 物理の館物語(著者不明)/小川洋子『物理の館物語』参照(柴田元幸編『短篇集』所収)
- 『還れぬ家』『空にみずうみ』佐伯一麦(著)
- 十一年目の枇杷(執筆)佐伯一麦(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/巻頭)
- もっともらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/らしさについて考える④)
- 【続】フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い化面』小野正嗣(筆)NHK100分de名著