これぞ短編って感じの傑作。小学生の日常に、未確認飛行物体が登場するにもかかわらず、それは本題でないから謎のままスルーし、身近に自傷行為者がいるのも事実として存在するだけでそれ以上の展開も詮索もしない。小学生が同級生や、また家族とのリアルなやりとりで、目の前に起きた難題(当事者にとっては事件!)に向き合っていく爽やかな物語だ。こどもの目線から世界を観れば(実は大人も同じなんだが)謎が溢れ、不安を予感させる出来事もまた山積。それでも、目一杯、今を生きようとしているのは、嗚呼うらやましい世界であ~る。だから児童文学は愉しい。
最近の読書10冊(予定を含む)
- サン=テグジュペリ Saint-Exupéry R.M.アルベレス(著)中村三郎(訳)1998年改訂版
- においのカゴ 石井桃子創作集 大西香織(編集)
- 日本美術のことばと絵 玉蟲敏子(著)角川選書571
- 考える江戸の人々 自立する生き方をさぐる 柴田純(著)
- だまされ屋さん 星野智幸(著)
- 日本幼児史 子どもへのまなざし 柴田純(著)
- 雪の森のリサベット アストリッド・リンドグレーン(作)イロン・ヴィークランド(絵)石井登志子(訳)
- 子どもらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号/らしさについて考える③)
- ブリキの卵/この世は少し不思議 恩田陸(著)「タマゴマジック」所収・河北新報出版センター発行
- 分断を超えるハンセン病文学の言葉(執筆)木村哲也(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号)