最終章(第4章)の話題は「北アフリカ症候群」という1952年発表の(一応)医学的問題。一応というのが肝だ。医師として当時の北アフリカ人(主にアルジェリア出身のアラブ人移民労働者)に見られる症例を見たF.ファノンさんは彼らの「苦しい」「死にそう」との訴えの原因は医学として個人の肉体を看る範疇を超え、劣悪な環境の問題、社会的問題と捉えた。そしてこの問題を一般雑誌(医学系統でない)に掲載したのだ。
患者の尊厳。今から70年も前に、非植民地の被差別民の人権・尊厳を当たり前のことと考えた一人の医師の問いかけは、今なお世界中につづく問いかけだ。
TV放送では、聴き手の伊集院光さんが「諦めたらそこに分断が生まれ、答えを出したらそこに差別構造が生まれる」と表現していた。つまり、問い続ける精神こそが人間を真の人間たらしめると辨えねばならないのだ。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 飛ぶ教室66号(2021年夏) 特集:あの物語とその周辺
- 読書からはじまる(著)長田弘/ちくま文庫
- 子どもの本のグレートランナーに聞く! 第1回 神宮輝夫/飛ぶ教室 第61号(2020年春)所収
- 日本の住宅(著)藤井厚二/藤井厚二建築著作集に収録
- コロナと無責任な人たち(著)適菜収/祥伝社新書
- 佐藤愛子の世界(文春ムック)
- 福島の甲状腺検査と過剰診断 子どもたちのために何ができるか(著)髙野徹・緑川早苗・大津留晶・菊池誠・児玉一八
- 【再掲】うたうかたつむり 野田沙織詩集
- 暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ(著)堀川惠子
- 橋本夢道物語―妻よおまえはなぜこんなに可愛いんだろうね(著)殿岡駿星