(図書館ラベルが強烈、なのは慣れた。)それ以上にインパクトあるタイトルと、想像力を掻き立てる表紙デザイン。察するに、無いはずの四号室の物語かなとの妄想は妄想だった。古いアパートを舞台に繰り広げられる、(ある意味)時空小説。ネタバレ解説を読んでからでも充分愉しめる作品になっている。アパートの一室(五号室)そのものが主人公ともいえるし、繰り返し読んでみる楽しさも(50歳以上なら尚更)ありそうだ。1970年代以降の日本の庶民カルチャーが満載で、非常になつかしく「そうそう、そんなTV見てたな」「たしかに流行っていたなあ」と人生を振り返りつつ、その時代その時代の空気感が蘇ってくる。当然のこと、読者であるはずのわたしも気がつけば五号室の住人の知り合いとして作中に佇んでいるのだ。
ちなみに作者の長嶋有さんは1972年生まれ。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 「おばさん」がいっぱい(執筆)三辺律子(『図書』岩波書店定期購読誌2021年4月号/本をひらいた時)
- 七万人のアッシリア人 ウイリアム・サローヤン(著)斉藤数衛(訳)現代アメリカ作家集上巻所収1971年初版
- 季(とき)間中ケイ子(筆)ほか/日本児童文学2021年3・4月号 特集25年後の子どもたちへ
- カフカらしくないカフカ 明星聖子(著)
- 雪の練習生 多和田葉子(著)
- 物理の館物語(著者不明)/小川洋子『物理の館物語』参照(柴田元幸編『短篇集』所収)
- 『還れぬ家』『空にみずうみ』佐伯一麦(著)
- 十一年目の枇杷(執筆)佐伯一麦(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/巻頭)
- もっともらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/らしさについて考える④)
- 【続】フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い化面』小野正嗣(筆)NHK100分de名著