(図書館ラベルが強烈、なのは慣れた。)それ以上にインパクトあるタイトルと、想像力を掻き立てる表紙デザイン。察するに、無いはずの四号室の物語かなとの妄想は妄想だった。古いアパートを舞台に繰り広げられる、(ある意味)時空小説。ネタバレ解説を読んでからでも充分愉しめる作品になっている。アパートの一室(五号室)そのものが主人公ともいえるし、繰り返し読んでみる楽しさも(50歳以上なら尚更)ありそうだ。1970年代以降の日本の庶民カルチャーが満載で、非常になつかしく「そうそう、そんなTV見てたな」「たしかに流行っていたなあ」と人生を振り返りつつ、その時代その時代の空気感が蘇ってくる。当然のこと、読者であるはずのわたしも気がつけば五号室の住人の知り合いとして作中に佇んでいるのだ。
ちなみに作者の長嶋有さんは1972年生まれ。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 飛ぶ教室66号(2021年夏) 特集:あの物語とその周辺
- 読書からはじまる(著)長田弘/ちくま文庫
- 子どもの本のグレートランナーに聞く! 第1回 神宮輝夫/飛ぶ教室 第61号(2020年春)所収
- 日本の住宅(著)藤井厚二/藤井厚二建築著作集に収録
- コロナと無責任な人たち(著)適菜収/祥伝社新書
- 佐藤愛子の世界(文春ムック)
- 福島の甲状腺検査と過剰診断 子どもたちのために何ができるか(著)髙野徹・緑川早苗・大津留晶・菊池誠・児玉一八
- 【再掲】うたうかたつむり 野田沙織詩集
- 暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ(著)堀川惠子
- 橋本夢道物語―妻よおまえはなぜこんなに可愛いんだろうね(著)殿岡駿星