(図書館ラベルが強烈、なのは慣れた。)それ以上にインパクトあるタイトルと、想像力を掻き立てる表紙デザイン。察するに、無いはずの四号室の物語かなとの妄想は妄想だった。古いアパートを舞台に繰り広げられる、(ある意味)時空小説。ネタバレ解説を読んでからでも充分愉しめる作品になっている。アパートの一室(五号室)そのものが主人公ともいえるし、繰り返し読んでみる楽しさも(50歳以上なら尚更)ありそうだ。1970年代以降の日本の庶民カルチャーが満載で、非常になつかしく「そうそう、そんなTV見てたな」「たしかに流行っていたなあ」と人生を振り返りつつ、その時代その時代の空気感が蘇ってくる。当然のこと、読者であるはずのわたしも気がつけば五号室の住人の知り合いとして作中に佇んでいるのだ。
ちなみに作者の長嶋有さんは1972年生まれ。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 声無くして人を呼ぶ(執筆)川端知嘉子(『図書』岩波書店定期購読誌2021年2月号/巻頭)
- おさがしの本は 門井慶喜(著)
- 穴 小山田浩子(著)
- 工場 小山田浩子(著)
- ヴァン・ゴッホ・カフェ THE VAN GOGH CAFE シンシア・ライラント(作)中村妙子(訳)ささめやゆき(絵)
- 手塚治虫コミックストリックス
- しもやけぐま 今江祥智(文)あべ弘士(絵)
- 壁 濱野京子(筆)大島千明(画)日本児童文学2021年1・2月号 創作特集ディスタンス
- 子どもが感じる「距離」井嶋敦子(筆)日本児童文学2021年1・2月号 創作特集ディスタンス
- 追悼 藤富保男(季刊びーぐる 詩の海へ 38号特集)