サローヤン氏のこの写真、この口髭ポーズは希有かも。今、なにゆえにW.サローヤンさんなのかといえば日本児童文学最新号で皿海達哉さんが彼の著の一節として「人類と呼んでいいのは赤ちゃんだけ」を紹介していたから。
ならば、どんな流れでそういう表現が生まれたかを確認したかったのだ、、、、が、それはそんなに難しい問題でもない。もともと絶滅したとされる国アルメニアの末裔であるサローヤンさんだから、少数民族に寄り添う思いが格別強かったのは自然の流れ。当時(邦訳が1971年)世界中に七万人しかいなかったアッシリア人に実際遭遇されたのだろう、人種のるつぼアメリカ合衆国で。興味深いのは、この短編作品に日系人が重要な役どころで登場すること。かれが生まれたカリフォルニアは日本人移民の起点だったから、かれの周囲にも少なからずいたのだろう。人類は皆兄弟と信じてその理念を弘めたかったかれの作品には、ひねくれたところや斜に構えた感じはなくて、唯々、あらゆる人種民族にたいする暖かなまなざしだけが充満している。
50年もまえの小品ながら、時代を超える普遍性とともに庶民のくらしのリアリティが今も通用するのは凄いことにちがいない。
最近の読書10冊(予定を含む)
- EREWHON エレホン サミュエル・バトラー(著)武藤浩史(訳)
- 失われた芸術作品の記憶 ノア・チャーニイ(著)服部理佳(訳)
- 問いかけるアイヌ・アート 池田忍(編)五十嵐聡美・貝澤 徹・小笠原小夜・吉原秀喜・高橋 桂・中川 裕・山崎明子・池田 忍(著)
- 撤退の時代だから、そこに齣を置く(執筆)赤坂憲雄(『図書』岩波書店定期購読誌2021年1月号/往復書簡「言葉をもみほぐす」最終話)
- 絵本の本 中村柾子著
- 藤井聡太 すでに棋士として完璧に近い(谷川浩司筆・文藝春秋2021新年特別号所収)
- 石たちの声がきこえる マーグリート・ルアーズ(作)ニザール・アリー・バドル(絵)前田君江(訳)
- 国旗のまちがいさがし 苅安望(監修)
- ひみつのビクビク フランチェスカ・サンナ(作)なかがわちひろ(訳)
- あしたはきっと デイヴ・エガーズ(文)レイン・スミス(絵)青山南(訳)