サローヤン氏のこの写真、この口髭ポーズは希有かも。今、なにゆえにW.サローヤンさんなのかといえば日本児童文学最新号で皿海達哉さんが彼の著の一節として「人類と呼んでいいのは赤ちゃんだけ」を紹介していたから。
ならば、どんな流れでそういう表現が生まれたかを確認したかったのだ、、、、が、それはそんなに難しい問題でもない。もともと絶滅したとされる国アルメニアの末裔であるサローヤンさんだから、少数民族に寄り添う思いが格別強かったのは自然の流れ。当時(邦訳が1971年)世界中に七万人しかいなかったアッシリア人に実際遭遇されたのだろう、人種のるつぼアメリカ合衆国で。興味深いのは、この短編作品に日系人が重要な役どころで登場すること。かれが生まれたカリフォルニアは日本人移民の起点だったから、かれの周囲にも少なからずいたのだろう。人類は皆兄弟と信じてその理念を弘めたかったかれの作品には、ひねくれたところや斜に構えた感じはなくて、唯々、あらゆる人種民族にたいする暖かなまなざしだけが充満している。
50年もまえの小品ながら、時代を超える普遍性とともに庶民のくらしのリアリティが今も通用するのは凄いことにちがいない。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 戦争は女の顔をしていない(著)スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(訳)三浦みどり
- 徹底して戦争と死について書く(執筆)沼野充義(『図書』岩波書店定期購読誌2020年11月号巻頭)
- 夢の舟唄(德永民平詩集)
- わさびの日本史 (著)山根京子
- 国家への道順(著)柳美里
- 正義のゲーム理論的基礎(著)ケン・ビンモア(訳)栗林寛幸
- 社会契約論ーーホッブス、ヒューム、ルソー、ロールズ(ちくま新書)(著)重田園江
- 40代から始めよう! あぶら身をごっそり落とす きくち体操
- スケール 上──生命、都市、経済をめぐる普遍的法則(著)ジョフリー・ウェスト(訳)山形浩生・森本 正史
- 多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)