手にしているのは平成2年改版43版本。この版で注目は表紙の奇っ怪な鉄製?オブジェ写真。左向きの顔にも見えれば、右下向きの顔も見える。作者はかつてTVにもよく出ていたゲージツ家・篠原勝之さんだった。
いまさらカフカの変身を紹介する必要もないくらい、巷には解説も評論も感想文もあふれかえっているに違いないけれど、今回一切参照しないで率直な印象を記しておく。(あとで比較してみるつもり・・・。)主人公は自分が毒虫に変身しちゃったにもかかわらず冷静すぎるのは、想定外の非常事態を経験した人なら「あり得る」と想うはずだ。それより意外だったのはエンディングだ。両親が、息子などいなかったかのごとく娘(主人公の妹)のことを思いやっている姿はシュール過ぎるぞ。人間は悪夢を消したい生き物という、哀しい現実をさらりと描いている。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 春の宵(著)クォン・ヨソン(訳)橋本智保/韓国女性文学シリーズ4
- アジの味(著)クォン・ヨソン(訳)斎藤真理子(頭木弘樹編『絶望書店』所収)
- ゆるく考える(著)東浩紀 (河出文庫)
- 他所者の神戸(執筆)尾原宏之(『図書』岩波書店定期購読誌2021年6月号)
- 実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル(著)鬼澤忍(訳)
- 「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ 長島有里枝(著)
- 未確認ハンバーグ弁当(作)日向理恵子/日本児童文学2021年5・6月号
- 雲と空のはざまで(執筆)大河原 愛(『図書』岩波書店定期購読誌2021年5月号/巻頭)
- お探し物は図書室まで 青山美智子(著)さくだゆうこ(羊毛フェルト)写真(小嶋淑子)装丁(須田杏菜)
- 三の隣は五号室 長嶋有(著)中公文庫