今朝の愛媛新聞2面「季のうた」に自由律俳人橋本夢道さんの句が採り上げられている。
みつまめをギリシャの神は知らざりき
橋本夢道
その昔、東京銀座の甘味店のために考えられた句だという。夢道さんは1974年に71歳で没しているが、これはいつの句だろうと気になった。1964年の東京オリンピックを念頭に古代ギリシアに想いを馳せたのだろうか。今日の新聞掲句は、いうまでもなく今日のオリンピック開会式に照準を合わせていて、ひねりの効いた解説で結ばれている。
従来とは異なるさまざまな展開にギリシャの神もさぞや驚いていることだろう。
この一文のお陰で、掲句は新たな趣を令和に獲得したことになる。いいなあ。佳い作品は時代を超えて受け継がれると聞くけれども、後世に読み返されることで、豊かな世界をさらに拡張させていくのだ。中には、作者の存命中に日の目を見なかった作が、のちの時代に何かの機縁で読まれて価値を見いだされることも少なくないに違いない。テクスト論的にいうなら、誰が書いたか、いつどこで書いたか、というだけでなく、誰がいつどこで読んだか、によって文学文芸の世界は無限に拡がる。
そんなわけで、掲句そのものが目次に組まれている『橋本夢道物語』を入手して読むかな、と思案しはじめたところ。夢想中。
最近の読書10冊(予定を含む)
- サニーちゃん、シリアへ行く 長有紀枝(文)葉祥明(絵)黒木英充(監修)
- 江戸の空見師 嵐太郎 佐和みずえ(著)
- その白さえ嘘だとしても 河野裕(著)階段島シリーズ第二作 新潮文庫書き下ろし
- indigo+ 赤崎チカ(著)Time is Art シリーズⅢ
- 古書店主とお客さんによる古本入門 漱石全集を買った日 山本善行×清水裕也(対談)
- 暮しの手帖1971年夏号
- 八年後のたけくらべ 領家髙子(著)
- キャパとゲルダ ROBERT CAPA & GERDA TARO ふたりの戦場カメラマン EYES OF THE WORLD マーク・アロンソン&マリナ・ブドーズ(著)原田勝(訳)
- ウルスリのすず SCHELLEN-URSLI ゼリーナ・ヘンツ(文)アロイス・カリジェ(絵)大塚勇三(訳)
- まことに残念ですが… ROTTEN・REJECTIONS 不朽の名作への「不採用通知」160選 アンドレ・バーナード(編著)木原武一(監修)中原裕子(訳)