ゆるく。それは生ぬるく聞こえるが、途轍もなく一途に、周辺にまとわりつく粘着思考を離れる考察態度を意味していた。外野の声を遮断して「考え続ける」価値を教えられた気がする。その意味では気易く「エッセイ集」と呼んでしまっては軽すぎるんじゃないかな。
2019年1月に発表された「悪と記念碑の問題」は著者の少年時代から連綿と続く関心事「政治や組織に力によって媒介され増幅される悪」について邪悪な歴史を伝える記念碑の意味とともに語る。記憶するために建てられる碑でありながら、建てて安心してさせてしまう忘却装置の役割も有するとの感想が開陳されて、ドキッとした。そこに政治的作為が見え隠れするなら尚更である。抽象化と数値化の暴力とも示される現実に、いままさにコロナ禍の政策報道を重ね見る。個々人の苦悩が見えなくされていく。日々の報道の洪水をまえにわたしは、「ゆるく」考えることを放棄してしまいそうになっている・・・・と教えて貰った。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 戦争は女の顔をしていない(著)スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(訳)三浦みどり
- 徹底して戦争と死について書く(執筆)沼野充義(『図書』岩波書店定期購読誌2020年11月号巻頭)
- 夢の舟唄(德永民平詩集)
- わさびの日本史 (著)山根京子
- 国家への道順(著)柳美里
- 正義のゲーム理論的基礎(著)ケン・ビンモア(訳)栗林寛幸
- 社会契約論ーーホッブス、ヒューム、ルソー、ロールズ(ちくま新書)(著)重田園江
- 40代から始めよう! あぶら身をごっそり落とす きくち体操
- スケール 上──生命、都市、経済をめぐる普遍的法則(著)ジョフリー・ウェスト(訳)山形浩生・森本 正史
- 多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)